シューマンコンクール1989⑤
[6月4日]出番を迎える
今日は私の第一次予選だ。
朝8時半から30分のリハーサル。私の前に弾くソ連のスチコフと共に車に乗り込み、会場へ行く。
スチコフとは何も喋らない。
スチコフにはひとり男性が付き添って来ていて、楽屋でその人に「あなたは何を弾くのか」と尋ねられた。
その人に「あなたは彼のお父さんなのですか?」とドイツ語できくと、「うーん、そうだ」と言う。
てっきりそうだと思っていたら実は彼は審査員であるマリーニン教授だったのだ。
彼は片言のドイツ語しかわからず私の質問にも適当に答えていたのだろう。
スチコフはマリーニン教授の弟子でリハーサルから付き添われているのである。
スタインウェイを選んでリハーサルを終え、ホテルで休んだ。
食欲はないが一応食堂へ行ってみた。
最初は良かったが毎日毎日の肉にはうんざりしてきた。
とにかく野菜が少なく、付け合わせはトマト一切れ、菜葉一枚といった具合である。
その日私と食堂で同席した女性二人は声楽部門の参加者とその伴奏者であった。
彼女も今日が本番で私と同様食欲がなくため息ばかりついていた。
食堂ではピアノと声楽の参加者が一緒なので、みんながみんな競争相手というのではないせいか一種和やかな雰囲気があった。
私と彼女も互いの成功を祈りながら励まし合って別れた。
午後3時。私の出番である。私の名前と曲目が紹介された後、舞台への一歩を踏み出した。
(プログラムより)
今日は日曜日なのでお客さんも多い。
まさに全力投球の演奏だった。
まさに全力投球の演奏だった。
いつも緊張すると満足に息ができない気がするが、今日は落ち着いていたようだ。
少し弾き急いだ感もあったけれど、何とか弾き切ることができた。
少し弾き急いだ感もあったけれど、何とか弾き切ることができた。
楽屋へ戻ると一人の男性に「あなたは本選までいくから頑張ってくださ い」と言われた。
実は彼は調律師で、本選の時に「ほら、私の言ったとおりになったでしょう」と、にっこり笑って言われることになるのである。
まだ第一次予選はあと3日間もあるけれど、私は次の第二次予選をめざして練習することにした。
受かるかどうかはわからない。
でも受かった場合、次でまた良い演奏をするために望みを持って練習するのだ。
まだ第一次予選はあと3日間もあるけれど、私は次の第二次予選をめざして練習することにした。
受かるかどうかはわからない。
でも受かった場合、次でまた良い演奏をするために望みを持って練習するのだ。
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